【はじめに】

同じ平均粒径。同じD50。粒度分布も単峰で、見た目には大きな違いはありません。それでも、体積分率(φ)が0.59 と 0.61 に分かれたとしたら、どのように考えるでしょうか。差は 0.02。一見すると小さな違いに見えるかもしれません。この程度の差であっても、成形密度や乾燥時の収縮挙動、さらには最終強度や歩留まりに影響する可能性があります。現場では、こうした“わずかな差”が工程安定性に現れることも少なくありません。

今回比較したのは、分級条件の異なる2つの粉体です。

Case1(微粉を除去した狭帯域分布)は、微粉を徹底的に除去し、粒径を揃えた分布です。体積分率は 0.59です。

Case2(小粒径帯が残存する分布)は、ピーク粒径より小さい粒子が dp/8 程度まで残存しています。D50はほぼ同程度で、分布形状も大きくは変わりません。体積分率は 0.61です。

統計的な指標ではほとんど差が見えないにもかかわらず、充填性には明確な違いが現れました。では、この差はどこから生まれたのでしょうか。

【見えていなかった違い】

従来の粉体評価では、以下のような統計量が主に使われます。

  • D50
  • 微粉量
  • span

しかし、今回の差は、それらでは説明できませんでした。鍵は、ピーク粒径 dp に対する粒径比(d/dp)にあります。dpが骨格を形成するとき、その間には空隙が生まれます。その空隙を段階的に分割できる粒径帯が存在すると、充填は進みます。

Case1では dp/3 より小さい粒子はほとんど存在しません。構造は均一ですが、空隙は大きく残ります。Case2では dp/8 程度まで粒子が存在します。dp/3〜dp/5 帯の粒子が骨格間の空隙を分割し、さらに小粒子がそれを補強します。結果として、階層的な充填構造が形成されました。

重要なのは、「微粉を増やした」という話ではないことです。骨格を支える粒径帯が存在しているかどうかが、ポイントでした。

【トレードオフの理解】

Case2が常に優れているわけではありません。dp/8程度まで粒子が存在するCase2は、骨格間の空隙を段階的に分割できるため、注ぎ込み体積分率は向上しました。しかしその一方で、粒径差が広がることで粒子間の運動様式や局所的な濃度分布にも変化が生じます。実務上は、次のような傾向が見られます。

観点Case1Case2
充填性
流動性
偏析リスク

微粉を除去した狭帯域分布(Case1)は粒径が揃っているため、流動挙動が安定しやすく、偏析も起こりにくい傾向があります。工程管理の観点では扱いやすく、再現性を確保しやすい分布です。一方、小粒径帯が残存する分布(Case2)は構造的には有利な充填状態を作りやすいものの、粒径差が大きくなることで輸送や投入時の分離挙動が変わる可能性があります。また、分級工程を簡略化できるためコスト面では有利になることもあります。つまり、「どちらが優れているか」という話ではなく、どの特性を優先するかという設計判断の問題です。

【粉体を「構造」として見る】

今回の検討を通じて見えてきたのは、同じD50であっても、粒径の分布の“組み立て方”によって挙動が変わり得るという点でした。

粒度分布は一つの数値で代表されがちですが、実際には粒子同士がどのように空間を占め、どの粒径帯が骨格を支えているかによって、形成される構造は異なります。充填性や流動性、さらには乾燥後の強度といった特性は、粒径そのものよりも、その配置や階層関係に影響を受けることがあります。粒度分布を単なる統計値として見るのではなく、どの粒径帯が構造にどのような役割を果たしているかという視点で整理する。

このように読み直してみることで、これまで「規格内」として一括りにされていたロット差や品質ばらつきに、別の説明軸が見えてくる場合があります。

【なぜロット差が説明できないのか】

「規格内なのに、なぜか詰まりが違う」
「同じ原料なのに、強度が安定しない」

このような現象の多くは、統計量では見えない構造差に起因している可能性があります。

粒度分布を構造視点で再解釈すると、

  • どの帯域が骨格を支配しているか
  • どの帯域が空隙を埋めているか
  • どこにトレードオフが潜んでいるか

が見えてきます。

【内部構造という考え方】

こうした観点から、粉体を

  • 平均粒径
  • 微粉量

だけでなく、『構造階層として評価する』というアプローチが有効になります。

ロットごとの構造傾向を把握することで、

  • 充填性の違いの説明
  • 分級条件の再設計
  • 乾燥後構造の予測
  • 強度ばらつきの原因推定

につなげることが可能になります。粉体設計は、経験と試行錯誤だけに依存するものではありません。
構造を読み解くことで、より合理的な議論が可能になる可能性があります。

【まとめ】

微粉を除去した狭帯域分布は美しい分布を作ります。しかし、それが常に最適とは限りません。粉体の違いは、平均粒径ではなく、骨格を支える粒径帯に現れます。

  • ロット差の理由を明確にしたい
  • 分級条件を構造視点で再評価したい
  • 乾燥後の強度ばらつきを整理したい

などの課題をお持ちであれば、粒度分布を構造として読み解くことが有効かもしれません。粉体を「数値」ではなく「構造」として見る。その視点が、設計と診断の両方をつなぐ鍵になると考えております。

なお、粒度分布データを基に構造傾向を整理する簡易構造スクリーニングも可能です。既存データから検討できますので、詳細はご相談ください。

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